カップルカウンセリングをしていて、この10年で感じられる大きな変化があります。
それは、タイトルにも書きました「妻たちの大反撃」です。
この10年を便宜的にコロナ前とコロナ中、そしてコロナ後と分けて考えてみます。
1「コロナ前」~被害に耐え続けてきた妻たち
これはコロナ前とは言うものの実は10年よりももっと前から続いていました。
この時期の夫婦カウンセリングは、家事をしない夫、暴言を吐くもしくは暴力を振るう夫、浮気する夫などの問題が多数を占めていました。
もちろん、それ以外の問題のご夫婦もありましたが、大きな傾向としてはそうでした。
そこには、DVはもちろん、発達障害傾向がある夫に振り回されてすっかり疲弊し、混乱しているいわゆる「カサンドラ症候群」の妻も多かったです。
このような妻たちは、その被害を控えめに訴えるか、夫の前ではあまり声高に言えず、別の個別セッションで被害を訴えるという場合が多かったです。
個別面接で「奥さん、それはDVなので、しっかり一時避難したり、長期的に別居を考えたりもしませんか?」と問いかけても、あまりはっきりした返答が返ってこない場合も多かったです。
このようなご夫婦には、私が作った「3つのお願い表」や、内閣府男女共同参画局の「○○家作戦会議」をお渡しして、2人の思いの違いや不満・希望を明確化していただくという介入もしてきました。
2「コロナ中」~対等に戦い始めた妻たち
ところが2020年、コロナが蔓延して、カウンセリングも一斉にオンラインとなったあの年から、一般に言う「コロナ離婚」問題のご夫婦が急増しました。
これはご存じのように、コロナ自粛で在宅ワークが増えたご夫婦が、24時間いっしょに居ることがきっかけとなっていました。自粛生活のスタイルの食い違いからストレスフルになり、夫婦喧嘩が増えて来談するものの元々の食い違いの多い夫婦だった場合がほとんどでした。(ブログ「心のソーシャルディスタンス」参照)
とくにあの時期は成城カウンセリングオフィスの近隣からの申し込みが多かったため、徒歩か車でオフィスに来ていただいて、お互いマスクして窓を開けて対面でカウンセリングをやっていました。
この時のもめ方は「夫婦対等」になっていた印象があります。
むしろ、家での夫の振る舞い、そしてコロナ禍にもかかわらず友人と飲みに行ったり、時にはキャバクラに行ったりしたことが発覚して責められるという、夫が分が悪いという感じの話し合いが多かった印象です。
3「コロナ後」~妻たちの大反撃
ところがコロナが収まった2023年頃から、妻たちの大反撃が始まりました。
もちろん、先述のご夫婦たちとは別のご夫婦たちなので、それまで我慢していた妻たちが反撃に出たとは言い切れないのですが、大きな潮流として感じざるを得ません。
それ以前から全くなかったわけではなかった「夫婦喧嘩で警察を呼ぶ」「近隣が通報して警察が来る」というケースが急に増えました。
それも、夫のDVに苦しんだ妻が身の危険を感じて通報するというよりも、お互いの喧嘩がエスカレートして、時には夫や近隣が通報して警察が来るというのも含まれていました。
この頃になると警察も慣れてきて、しっかりと双方から事情を聴取して、場合によってはその日だけは別々に過ごすことを指導したり、収まった様子を見て、説諭にとどめたりなどとこちらから見ても適切な対応をしてくれるようになりました。
その昔「民事不介入」と言って、家庭問題には一切かかわってくれなかった頃の警察とは全く別の対応となっています。
さらに夫婦カウンセリングの場面でも、妻が夫を激しく責めてなじって侮蔑してという場面が増えました。
さすがにそれは私が静止して「お互い極論になってしまっていますから、もう少し穏やかに!」としますが、家ではもっと激しい喧嘩が繰り広げられている様子です。
夫に殴られたら殴り返すというあっぱれな妻も現れました。
そしてとうとうこの1,2年で、「反撃しすぎる妻」が増えてきました。
4 反撃しすぎる妻たち
そうです。対等をはるかに超えて、夫を撃退する勢いの妻たちです。
正論ではあるけれど、それを強く激しく長時間にわたって主張する妻、一度爆発すると止まらない妻、多額の財産分与と養育費を請求して、結果的には家庭裁判所からも否定される妻等々です。
場合によっては、協議離婚した後に、妻が引き取った子どもの元夫との面会交流の約束を、いろいろな理由をつけて一度も果たさないということもあります。
これまで、ずっと我慢してきた妻たちが、やっと声を上げることができるようになり、時にその声が大きくなりすぎてしまうと考えると、とてもよくわかるので、それを責める気には全くなれないのですが。。。
それでも、夫によっては「女性の権利の濫用だ!」と(ひそかに)訴える人もおり、確かに過剰過ぎてかえってことがうまく運ばない、と思わざるを得ないケースも見られるようになって考えさせられる日々となりました。
そんな中で、信田さよ子先生がこのような記述をされているのを発見しました。
(私は)何冊かの著作において、「被害者権力」という言葉を使ってきた。被害者と自己定義した人たちが、苛烈に繰り広げる加害者への批判・攻撃に対する批判の言葉として、つまり被害者であることを支配のツールとして用いることへの批判としてである。(信田、2026)
https://www.webchikuma.com/n/n5beff3cfd9f3
まさに、そうかもしれない。
信田先生は、被害者が自分は被害者だと認めることそのものも苦しく、忌避したくなるものであり、それが権力志向にもつながるものだという深い理解も示しておられます。
まさにその通りで、それまで被害者として自分を認識できなかった妻たちが、昨今の社会的な動きに勇気を得て、「自分は被害者だったんだ」と認めた瞬間、これまで抑えてきてものが一気に爆発して、炎上して、極端な行動になってしまうのはとてもよくわかることです。
そして、このような反撃しすぎてしまう心を何とか現実的な対話として着地させるのが、私たちカウンセラーの使命かもしれないと思うようになりました。
どう着地してもらうか?
それまで穏やかで気弱な様子ではあるけれど、本当は「上から目線」だった夫に、しっかりと「対等な」目線で対話していくことを促すこともあります。また、妻の(急な)攻撃を恐れて、必要なことまで曖昧にしてしまっていて、かえって妻の怒りをかっている場合には、「どうしても無理なことはしっかり理由を説明して断る」などをご指導したりetc.
やはり夫がどう対応できるかに鍵があるというのは、変わらない感じがしています。