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カップル円満の秘訣3「肘と手守れ」

以前、このブログに「カップル円満の秘訣ーあごうたオッケー」を書かせていただきました。

この内容は2022年12月にNHKラジオ「医療ジャーナル」でも、紹介されました。

 

さて、今回はこの「あごうたオッケー」の続編ともいうべき内容です。

さしづめ「あごうたオッケー」はカップルの平常時の合言葉、今日お伝えする「肘と手守れ」は、カップルの非常時、つまり喧嘩中の合言葉です。(覚えやすさのために、両方とも身体にまつわる言葉にしてみました)

 

これはずっと以前に相性について書いたブログで、「相性はTalk(会話)、Walk(身体運動)、Battle(喧嘩)の3領域で見極めましょう」という提案の、「喧嘩」について詳しく述べるものにもなります。

(以下のリンクを参照してください)

 

 

さて、いつものように、少し長くなるので結論から書きましょう!

 

以前の「あごうたオッケー!」は

りがとう

めんなさい

れしい

すかる

(約束事や頼まれごとは)オッケー!と返事して行動

 

の頭文字でした。

 

今回の「肘と手(ひじとて)守れ」は

(喧嘩の時には)

とりの時間を持つ(持たせてあげる)

分を責めない

い詰めない

視しない(相手を敵だと思わない)

を守れ

 

のそれぞれの頭文字(はじめの一文字)です。

 

喧嘩の時には最低限これを守れば、さらなる悪循環を避けることができて、二次被害を防ぐことができます。そして、うまくすれば建設的な「対話」に持っていくこともできます。

 

では、ここから一つずつ解説していきましょう。

 

「ひ」・・・一人の時間をもつ(持たせてあげる)

カップルが喧嘩になったときに、なかなか一人の時間を確保するのが難しくなり、そのストレスもあって、余計にお互いを傷つけてしまいかねません。

これは「(腹立ちなどの)気持ちが収まらない」とか「気がすまない」という気持ちから来るものですし、場合によっては「相手から離れるのが不安」という場合もあります。

 

けれども、お互いもう大人です。喧嘩をしたからと言って何かやらかしてしまうとか、どこか遠いところに行ってしまうということはないでしょう。(あるいは、それが繰り返されるようなお相手は、そもそも一緒にいるべきかどうかを考えなくてはいけませんよね)

ここは思い切って、頭を冷やすためにもしばらく一人になりましょう。

 

その際に、黙って去っていくのではなく「少し頭を冷やしてくるね」とか、「今日はここまでにして、お互い別々に過ごそう」と提案して、一人の時間を確保すべきです。

 

「じ」・・・自分を責めない

じつは、喧嘩がこじれる多くの場合、相手への怒りや責めたい気持ちの奥に「自分がバカにされている」「自分がないがしろにされた」という被害感とそれによって損なわれた自尊感情が問題となります。

 

言い換えれば、被害感と自己卑下、屈辱感などがごちゃ混ぜになって自分を責める気持ちも湧いてきて、素直になれなくなっています。相手を責めながら本当は自分を責めている(「こんな自分だから嫌われてるんだ」「こんな自分だからバカにされている」「自分は結局はいいように利用されているだけなんだ」等々)ことがほとんどです。

 

ここで、自分を責める気持ちにストップをかけて自分を大切にする行動を取れれば、それは結果として相手のことも最低限大切にする行動につながります。

 

「と」・・・問い詰めない

これはわかりやすいでしょう。

喧嘩の時にはどうしても相手を問い詰めたくなります。けれどもそれは単に攻撃していることになります。さらにその問い詰めに相手がうまく答えてくれないと余計に腹が立つ、かといって反対にうまく答えたら「本当に口ばっかりなんだから」とまた腹が立つと、ダブルバインド的に「どうなっても余計に腹が立つ」、相手からすれば「どうやっても余計に怒られる」ということになります。

 

これでは成り立つはずの対話も成り立たなくなります。

 

「て」・・・敵視しない(相手を敵だと思わない)

これは、当然のことではあるのですが、喧嘩の最中には案外難しいことかもしれません。喧嘩の最中には「相手は私を嫌っている」とか「この人は本当は悪い奴だ」と思い込んでいるものです。心理学的にはsplittingと呼ばれる心の中で分裂が起こっている状態とも言えます。

あるいは、最近臨床現場以外でもよく見聞きするようになった「解離」が起こっていてのことかもしれません。

 

これが起こらないようにするには、かなりの努力が必要ですが、「あ、また相手を敵視しちゃってるな」とその都度意識することが、取り組みの始まりです。

 

相手を敵視してしまうと、本当には思っていない酷いことや、普段の気持ちとは正反対の「嫌い!」という言葉を吐いてしまいがちです。

そうすると相手もそれに応戦する形で酷いことを言ってくるか、喧嘩が終わって仲直りした後でも、ひどい言葉によって傷ついた部分が残っていたり、ひどい言葉そのものは記憶に残っていて、その後も悪影響を及ぼしてくるということになりかねません。

 

いかがでしょうか?

 

上記の秘訣は心理学的に言えば「自分自身と相手との両方に対して適切な心理的な距離を確保する」ということです。つまりは「親密性の課題」「親密な関係の中での適切な距離」の課題です。

 

この適切な心理的距離は、健全な幼少期~青年期を過ごしてくれば自然に身につくものなのですが、不適切養育やいじめられ経験・被虐待経験などにより、これを学ぶ機会が阻害された場合は、意図的に学ぶ必要があります。

 

これを読んで「自分たちは、喧嘩の時ももっと健康的で大人な喧嘩をしている」と感じられた方は、素晴らしいです。

 

けれども、多少でも思い当たるところのある人は、ぜひ頑張ってこの4か条を守れるようにしてみてください。

そうすれば、それまでよりも二人の関係がぐっとよくなり、対話が成立しやすく、建設的な関係になれるはずです。

 

そして、そのような建設的な喧嘩と対話が経験できたら、ぜひともそれを継続させる努力をしてください。

 

 では、実際の建設的な喧嘩と対話でのコミュニケーションは、どのようにすればいいのでしょうか?

これは、また近いうち続編として書きたいと思います。

 

                                 以上

 

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