恥と恐れ

しばらく、更新をさぼってしまいました。

じつは他の原稿に追われていました。

 

と言っても、他の原稿が終わったわけではないのですが、ちょっと気持ちに余裕が出来たので更新します。

 

今日の話題は「恥と恐れ」です。

この二つは私たちの進歩や成長を阻んでいる2大要素と言えます。

 

進歩と成長を阻むということは心の健康を阻害しているとも言えます。

本来私たちの心や魂は、自然にしていれば成長するはず、成長せざるを得ないはずなのですが、それを恥と恐れが阻むという感じでしょうか。

 

まず、恥と恐怖心に関して、去年3度目の来日を果たされた情動焦点化療法の創始者であり、権威であるGreenberg,L.先生にインタビューした時の一節を引用します。(『心理臨床の広場』という雑誌に掲載されました)

ーーーーーーーー

(インタビューアー:福島)前回のワークショップでも恥についてはいろいろと議論にはなりましたね。とくに日本的な恥と、西洋的な恥の違いについて議論した記憶がありますが、今回何か結論的なことが得られましたか。

(グリーンバーグ先生)今回参加者の誰かが日本には恥恐怖(shame phobia)というものがあると話してくれました。それは新しい大切な考えだと思いました。日本では恥にまつわるたくさんの恐怖心があります。西洋にももちろん恥に対する不安はあります。けれども日本ではそれはもっと強いものです。日本では恥の文化としての社会不安がより強いのだと思います。恥への不安には、「恥をかかされることへの恥」と「恥をかかせることへの恥」が含まれています。人々は自分がしていることが他者にどういう影響を与えるかに強い関心を払って、そして不安になるのです。その点がとても違うところです。

ーーーーーーー引用以上

 

たしかに私たち日本に住む人にとって、「恥をかく」「恥をかかされる」「恥をかかせる」というのは重大な事態です。それに対して欧米の人と付き合うと、たしかにこの部分のはたらきが少ない感じがします。

例えば、国際学会で小さな部屋に遅れて入ったとしても、皆さん堂々としています。僕も本当はそうしたいタイプなので、この時ばかりは背をかがめたりはせずに堂々と入って、最前列の真ん中に座ったりします(笑)。

でも、日本でそんなことをしたら「厚かましい」と言われちゃいますよね。

 

まあ、学会やセミナーではどこに座ろうがその人の好きでいいと思うのですが、例えば新しい何かを始めるとき、また、新しい対人関係パターンを作ろうとするとき、多くの人は「恥と恐れ」を抱きます。それが例えば「バイトを始める」とか「転職する」というものならもちろん、「夫(妻)にありがとうを言う」とか、「不毛な喧嘩を途中でやめる」などの建設的な行動でも、そこに恥や恐れが伴いがちです。

 

「新しい行動をとって、それがもし拒絶されたり笑われたりしたら、もう生きていけない」という恐怖心が、私たちを強く支配します。

「周りの視線が怖いから」「自分の体型が恥ずかしいから」なども、すべてこの恥と恐れにつながる心性です。

 

本当はこの恥と恐れを手放して、「とりあえずやっちゃおうか!」となれると、私たちは小さな、そして、本当は大きな第一歩を踏み出すことができます。

 

反対に、この恥と恐れにとらわれるとすべての成長のチャンスを生かせないままに過ぎていきます。

 

たとえば僕の周りにも不倫を繰り返す人がいます。

反対に「私(僕)が支えなくちゃ」という恋愛や結婚ばかりを選ぶ人もいます。

そういう人たちの心理をよくよく探ると、そこにはやはり恥と恐れがあることがわかります。

 

つまり、完全に対等な関係で「愛し愛される」もしくは「私が愛しても、相手は愛してくれないかもしれない」というのはとても怖い、まさに恥と恐れを生みやすい状況なので、「結局は結ばれない」不倫を選んだり「支えるという形の安心感」を選んだりするのです。

 

何も確実なものがないところで、真価が問われる。

こんな怖いことはないとも言えます。

 

でも、そういう「暗闇」に一歩でいいから踏み出す、その勇気が必要なのだと言うしかありません。

 

もちろん、セラピストとして、その一歩を支える気持ちは、十分過ぎるほどあります。

そのような一歩を踏み出す人の勇気で、私たちセラピストは生きていけるとすら言えるのです。

 

 

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